ホームページの著作権を盾に解約できないは本当か|制作会社トラブルの対処法
富山でホームページを作っていると、「前の会社と解約したいのに、著作権を盾にされて進めない」という相談を本当によく受けます。金額の交渉より先に、この一言で心が折れてしまう経営者は少なくありません。
実際に似た相談を受けたことがあります。「解約を伝えたらサイト閉鎖やドメイン停止を告げられ、やむなく新しいドメインでゼロから作り直した」「ドメインが制作会社名義になっていて、移管やデータ受け渡しに高額な費用を請求された」「サーバーやWordPressの管理権限を渡してもらえない」「そもそも制作会社と連絡が取れなくなってしまった」といったケースです。
この記事では、「著作権があるから解約できない」という主張が法的にどこまで正しいのかを整理し、あなたの資産を守りながら安全に乗り換える手順まで案内します。法律の話には、著作権法の条文(e-Gov法令検索)や文化庁、裁判所などの一次情報リンクを付けるので、専門家でなくても「これは公的機関がこう言っている」と切り分けて読めます。
- 「著作権があるから解約できない」がどこまで正しいのか
- 制作費を払っても著作権が自分のものにならない理由
- ありふれたレイアウトに著作権が及びにくいこと、その落とし穴
- 自分の資産だけ持ち出して安全に作り直す考え方
- 本当の壁は著作権ではなくドメインの名義であること
- 揉めたときに頼れる公的な相談窓口
ホームページ制作会社と著作権の基本ルール
先に結論をお伝えしておくと、著作権が制作会社に残っていても、解約や乗り換えができなくなるわけではありません。相手の主張を頭から否定するのではなく、仕組みを正しく押さえておくことで、どう乗り換えるかの道筋が冷静に見えてきます。
なお、これは特定の制作会社を批判する記事ではなく、業界にこういう商習慣がある、という構造の説明です。著作権や契約の最終判断は事案ごとに変わるので、揉めそうなときは専門家に相談する前提で読んでください。
制作会社に著作権があると言われるのはなぜか
著作権法でも、著作者人格権と著作権は「著作物を創作した時点」で自動的に発生すると定められています。登録などの手続きは要りません(出典: 著作権法17条(e-Gov法令検索) )。
文化庁も、委託して制作した場合は料金の支払いにかかわらず、実際に創作した受注者側が著作者になる、と説明しています(出典: 文化庁「著作権テキスト」 )。だから「著作権はうちにある」という主張自体は、法律上ありうる話なのです。
ここを頭ごなしに否定すると、話がこじれます。まずは「なるほど、著作権が制作会社に残ること自体はあり得るんだな」と受け止めるところから始めましょう。
制作費を払えば著作権は自分のものになるのか
多くの経営者が誤解しているのがここです。「お金を払ったんだから、当然うちのもの」ではありません。
制作費を支払った事実だけでは、著作権(財産権)は自動的に発注者へ移りません。移すには、契約書や発注書、見積書、メールなどで「著作権を譲渡する」と定めておく必要があります(出典: 著作権法61条ほか(e-Gov法令検索) )。
逆に言えば、契約書に譲渡や利用許諾の取り決めがあれば、あなたに利用できる範囲がある可能性があります。 まずは手元の契約資料を引っぱり出して、著作権や利用について何が書いてあるかを確認してください。
あなたの資産と会社側の権利を分ける
「ホームページ全体に著作権がある」という説明は、実は大ざっぱすぎます。ホームページは複数の要素の集まりで、要素ごとに権利者が違うからです。
大きく3つに分けると整理しやすくなります。
| 分類 | 主な中身 | 乗り換え時の扱い |
|---|---|---|
| あなたの会社の資産 | 掲載テキスト、会社情報、商品情報、自社で撮った写真、支給したロゴ | 持ち出して使える |
| 制作会社側に残りやすい | 描き下ろした特注イラスト・バナー、創作性のあるソースコード | コピーせず差し替える |
| 著作権が及びにくい | 会社概要や料金表を並べる、ありふれたレイアウト・一般的な画面構成 | 参考にしてよい(似せすぎは注意) |
「著作権が及びにくいもの」については、次で詳しく見ていきましょう。
ありふれたレイアウトや構成に著作権はあるのか
ここが、この記事でいちばん知ってほしいところです。著作権法が守るのは「創作的な表現」であって、「アイデア」や「ありふれた表現」は守りません。
著作権法は著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義しており、単なる事実や、誰が作っても似てしまうありふれたものは対象になりにくいのです(出典: 著作権法2条1項1号(e-Gov法令検索) )。
実際、あるウェブサイトの表現が争われた東京地裁の判決(平成26年7月30日)では、次のような要素が「創作的表現とはいえない」と判断されました。
- 店舗名や電話番号の配置
- 実績を赤い帯で強調すること
- サービス内容・特徴・費用・FAQ・顧客の声・依頼の流れ・見積フォームを並べる構成
裁判所は、これらを「広告用サイトで広く一般的に行われる構成・手法」と位置づけています(出典: 東京地裁 平成26年7月30日判決(裁判所) )。
ただし、これを「レイアウトが似ていれば何でもOK」と受け取ると、思わぬ落とし穴があります。
このあたりは事案ごとに判断が変わるところなので、心配なときは自己判断せず、著作権の相談窓口や弁護士に確認してください。
自分で直せないのはなぜか
もうひとつ、乗り換えを考えるうえで大事な権利があります。著作者人格権のなかの「同一性保持権」です。
これは、著作者が「自分の作ったものを、意に反して勝手に変えられない」権利です(出典: 著作権法20条(e-Gov法令検索) )。やっかいなのは、この著作者人格権は著作権(財産権)を譲ってもらっても、制作者側に残るという点です。一身専属といって、そもそも譲渡できない権利なのです。
つまり、今あるサイトのデザインやコードを、制作会社に無断で切り貼りして手直しして使い回す、というやり方は、この権利に触れる可能性があります。既存のものを作り替える行為は、著作権法では「翻案(=元の作品を土台に作り替えること)」の問題になる場合もあります(出典: 著作権法27条・28条(e-Gov法令検索) )。
制作会社の「著作権があるから解約できない」への対処法
「解約できない」は本当か
まず押さえてほしいのは、契約を終われるかどうかは、著作権だけで決まる話ではないということです。
契約を解約できるかは、契約期間、自動更新、中途解約の条項、違約金、未払いの有無などで決まります。著作権が関わるのは、そのうち「今のサイトをそのまま引き継げるか」「改変できるか」「データを受け取れるか」の部分だけ。解約できるかどうかを直接左右するものではない、と考えてよいでしょう。
実際、工務店の2代目という経営者が、この一部始終をXに投稿しています。月18,000円で管理を任せていた制作会社に解約を伝えたところ、強く引き止められ、「解約するなら50万円ほどかかる」と言われた。
理由を聞くと「デザインやドメインを移設する費用」。持ち帰ってAIに相談すると「ドメイン移管はそこまで高額になりにくい」「デザインも著作権に配慮したオリジナルの形で作れる」との答え。結局「ドメインの移管だけお願いします」と伝え、質問攻めにあいながらも、最終的には解約を承諾してもらえた、という流れです。
m_syachoo Xの投稿よりついこの間まで、自社ホームページの管理を、とある制作会社に月18,000円で依頼していました。ただ最近は、AIの進化もあり、ホームページを自社で管理するハードルがかなり下がってきたと感じています。そこで、制作会社に解約したいと電話したところ、、、Xで元の投稿を見る
このケースで効いたのは、感情的にやり合うことではなく、「移設費用の名目は妥当か」を落ち着いて確認し、ドメインという実務の要点に絞って交渉したことです。
ただし、「牽制だから無視していい」という意味ではありません。牽制でも、揉め方は契約書の中身しだいです。だから次に説明する手順を踏んでください。
デザインを再現・再構築すれば乗り換えられる
乗り換えの基本の考え方は、シンプルです。今のサイトの中身を丸ごとコピーするのではなく、自分の資産だけを持ち出して、デザインは新しく作り直す。
具体的には、こう進めます。
- あなたの会社の文章、自社で撮った写真、ロゴといった「もともとあなたのもの」を持ち出す
- デザインは、色の雰囲気や全体の印象を参考にしつつ、新しいクリーンなコードで作り直す
- 制作会社が作った特注のイラストやバナーは、フリー素材や新規制作のものに差し替える
なぜこれで大丈夫なのか。著作権の侵害かどうかは、大まかに言うと「依拠性(相手の作品を見て、それを基に作ったか)」と「類似性(守られる創作的な表現が同じか)」で判断されます。前に紹介した東京地裁の判決も、共通する部分がアイデアやありふれた表現にすぎない場合は複製にも翻案にも当たらない、という考え方を示しています(出典: 東京地裁 平成26年7月30日判決(裁判所) )。
だから、ありふれた構成を参考にしつつ、中身を自分の資産と新規制作で組み直すなら、著作権侵害には当たりにくいと考えられます。 しかも古い重たいコードが消えて表示も速くなるので、作り直しはあなたにとってもメリットがあります。
再現・乗り換えでつまずく典型パターン
安易に「じゃあ作り直せばいいのか」と走る前に、つまずきやすいポイントを正直にお伝えしておきましょう。ここを踏むと、かえってトラブルのもとになります。
- 制作会社が作ったソースコードや特注イラスト、バナーを、そのままコピーして使う(侵害リスクがいちばん高い、火種になりやすい典型)
- デザインをそっくり似せすぎる(著作権はクリアできても、不正競争防止法の問題)
- 契約書に著作権譲渡や解約の条項があるのに、確認せず動く(内容によっては手続きや費用が必要)
- ドメインの名義が制作会社のまま(次で説明する、乗り換えの本当の壁)
これらに当てはまりそうなら、自己判断で強行せず、専門家に相談してから動いてください。
本当の壁は著作権ではなくドメインの名義
ここまで著作権の話をしてきましたが、実は、乗り換えでいちばん困るのは著作権ではありません。ドメインとサーバーの名義です。
Xには、こんな警告や実害の声がたくさんあります。ドメインを制作会社名義にされていて、解約したらURLごと消えた。更新したいと言ったら「うちが管理しているので1回3万円」と言われた。
制作会社が倒産して、管財人からホームページデータの移管は1件11万円だと案内された。いずれも、著作権ではなくドメインやデータの管理権限が原因で起きているトラブルです。
Veronicaweb9 Xの投稿よりホームページを依頼する前に必ず確認してください。「ドメインとサーバーは誰の名義ですか?」制作会社名義のままだと、リニューアルや移管の時に自由に使えないケースがあります。うちのクライアントさんの事例では、高額請求された例も。ドメイン・サーバーは自社名義で契約が一番安心です。Xで元の投稿を見る
著作権を心配する前に、まずドメインが誰の名義になっているかを確認してください。ここが自社名義なら、乗り換えの選択肢はあなたの側に残ります。
制作会社側の本音と誠実さの見分け方
公平を期すために、作る側の本音もお伝えします。制作会社がすべて「囲い込みをしている」わけではありません。
制作者のなかにも、契約終了に伴うドメイン譲渡の拒否はすべきでない、と明言する人がいます。
(出典: 制作者のXの投稿 )
「著作権は基本的に譲渡しないスタンスだが、使える権利と著作権は別のものだと説明している」という制作者の声もあります。
一方で、「お金を払ったんだから著作権は自分のもの、というのは間違い。外注した場合、著作権は原則として制作会社側に残る」と発注者に注意する制作者もいます。これは牽制ではなく、正しい情報提供です。
ホームページ制作会社を安全に乗り換える手順
まず持ち出せる自社データを確認する
最初にやるのは、何が自社の資産かを確認することです。次のものは、もともとあなたの会社のもの。手元にデータがあるか、なければ今のサイトから回収できるかを確認しておきます。
- 掲載している文章(会社概要・サービス説明・料金・お知らせ)
- 会社情報・商品情報
- 自社で撮影した写真、支給したロゴ
- 提供した資料やPDF
回収の際は、各ページを印刷やPDFで保存しておくと、後で「元はこうだった」と示せて安心です。
同時に、制作会社から提供された素材や、制作会社が作ったイラスト・バナー・コードは、権利が向こうに残っている前提で扱います。持ち出すのは「自分のもの」だけ、と切り分けておくと安全です。
ドメインとサーバーの名義を確認して移管する
次に、ドメインとサーバーの名義です。ここが乗り換えの心臓部です。
JPドメインなら、JPRS(日本レジストリサービス)のWHOISという仕組みで、登録者名や管理している事業者を確認できます(出典: JPRS WHOIS )。名義が自社なら、指定事業者を変更する手続きで他社へ移せます(出典: JPRS「管理指定事業者の変更」 )。名義が制作会社になっている場合は、まず名義変更に応じてもらえるかを確認してください。
移管には日数と条件があります。ドメインに「指定事業者変更ロック」がかかっていると手続きができないので、ロックの有無や認証コード(AuthCode)の交付条件も早めに確認しましょう(出典: JPRS「指定事業者変更ロック」 )。解約日から逆算して、余裕を持って動くのが安全です。
契約書で確認する3つのこと
動く前に、契約書で最低3つを確認します。
- 契約期間と解約予告(自動更新の有無、中途解約できるか、違約金があるか)
- 著作権とデータの引き渡し(譲渡や利用許諾、データの返却について何と書いてあるか)
- ドメインとサーバーの名義
もし契約がリースや分割払いになっている場合は、さらに注意が必要です。制作会社との関係だけでなく、リース会社や信販会社との契約も絡むからです。「初期費用ゼロ、月額いくら」という説明の裏で、総額が大きくなっているケースもあります。
条項の意味が読み取れない、揉めそうだと感じたら、その時点で専門家に相談してください。
揉めそうなときの相談先
ひとりで抱え込まないでください。 公的な相談窓口があります。
ただし、これらの窓口は役割が違います。文化庁やCRICは制度の説明が中心で、紛争中の個別事案には対応しないことがあります。個別の権利判断や相手方との交渉が必要なときは、弁護士への相談が向いています。
ホームページ制作会社と著作権に関するよくある質問
Q
今から著作権を譲り受けることはできますか。
Q
「解約するなら著作権買い取りで数十万円」と言われました。払う必要はありますか。
Q
もう不利な契約書にサインしてしまいました。取り消せますか。
Q
解約を申し出たのに、連絡を無視されています。
Q
「自社CMSのリース契約で途中解約できない」と言われました。
Q
契約書に著作権のことが何も書かれていません。どうなりますか。
Q
制作会社が倒産したら、ホームページは使い続けられますか。
Q
似たデザインで作り直したら、訴えられませんか。
Q
著作権譲渡契約とは何ですか。相場はいくらですか。
まとめ|著作権を盾にされても乗り換える道はある
「著作権があるから解約できない」と言われても、それだけで縛られるわけではありません。
著作権が制作会社に残ること自体はあり得ます。でも、あなたの会社の文章や写真は、あなたの資産です。
ありふれたレイアウトに著作権は及びにくく、自分の資産を持ち出して作り直せば、乗り換えの道はあります。そして、本当に確認すべきなのは著作権よりドメインの名義でした。ここが自社なら、選択肢はあなたの側に残ります。
著作権を盾にされても乗り換える道はある
- 「著作権が残る」ことと「解約できない」ことは別の問題
- 似せすぎない、契約書を確認する、揉めそうなら一人で抱えない
- 法律の話は一般論。個別の判断は文化庁の窓口や弁護士へ
そのうえで、「今の契約でも、別の形に載せ替えられるのか」を具体的に知りたくなったら、現状の契約書を手元に、気軽に相談してください。安全に移せるかどうか、一緒に確認できます。